飲食店の内装工事費用の相場【東京】
最終更新: 2026年9月
飲食店を東京で開業・改装する際、内装工事の費用がどれくらいかかるのかは、物件探しの初期段階から気になるポイントです。内装費用は物件の状態(スケルトンか居抜きか)や業態、坪数、仕上げのグレードによって大きく変わります。ここでは複数の内装・店舗デザイン関連メディアの情報を照合し、東京23区で飲食店を開業する場合の坪単価の目安と、費用が変動する要因、開業までの流れ、内装会社選びのポイントを紹介します。
費用相場の早見表
飲食店の内装費用は、居抜き物件(前テナントの内装や設備を活かす)か、スケルトン物件(構造体だけの状態から作る)かで大きく変わります。業態別の坪単価の目安は次の通りです。
| 業態 | 居抜きの坪単価目安 | スケルトンの坪単価目安 | 詳しい記事 |
|---|---|---|---|
| カフェ・喫茶 | 20万〜55万円程度 | 40万〜100万円程度 | カフェ開業の内装費用 |
| 居酒屋・バル | 20万〜50万円程度 | 40万〜80万円程度 | 居酒屋開業の内装費用 |
| バー・スナック | 15万〜35万円程度 | 30万〜60万円程度 | バー・スナックの内装費用 |
| ラーメン店 | 15万〜50万円程度 | 30万〜70万円程度 | ラーメン店開業の内装費用 |
| 焼肉店 | 20万〜50万円程度 | 50万〜100万円程度 | 焼肉店開業の内装費用 |
| ベーカリー | 35万〜60万円程度(税抜) | 45万〜80万円程度(税抜) | ベーカリー開業の内装費用 |
表の数値は各業態ガイドの早見表を転記したもので、出典と算出の前提は各記事に記載しています。業態を問わず物件の状態だけで見た目安としては、ALL MAKEが居抜き20万〜40万円・スケルトン40万〜80万円、店舗内装工事見積り比較.comが居抜き15万〜30万円・スケルトン30万〜60万円(いずれも厨房機器別途)を示しています。厨房設備や給排気・排煙設備の負担が大きい「重飲食」(焼肉店・ラーメン店など)は坪単価が高くなりやすく、厨房投資が比較的小さい「軽飲食」(カフェ・バーなど)は低めに収まる傾向があります。
出典: ALL MAKE「飲食店の内装費用はいくら?」(https://allmake.co.jp/blog/restaurant-interior-cost/)、店舗内装工事見積り比較.com「飲食店の内装工事の費用相場|坪単価・業種別の目安」(https://tenpo-naisoh.com/hiyou.html)(いずれも2026年9月時点の記載)
費用の内訳と変動要因
内装工事費用は複数の工事・費用項目の合計です。店舗設計施工.comの解説によると、おおむね次のような配分が目安とされています。
- 設計・デザイン費: 全体の10〜15%程度
- 解体・基礎工事: 全体の5〜10%程度(スケルトン物件で発生しやすい)
- 内装仕上げ工事(床・壁・天井など): 全体の25〜30%程度
- 厨房設備工事: 全体の20〜30%程度
- 電気工事: 全体の10〜15%程度
- 空調・給排水工事: 全体の10〜15%程度
出典: 店舗設計施工.com「飲食店の内装工事費用相場と成功のポイント」(https://www.shop-reform.com/case_study/marketprice/restaurant)
このほか、坪単価を左右する主な要因として次のようなものがあります。
- 物件の状態(スケルトン/居抜き): 居抜きは厨房機器や内装の一部を再利用できるため、一般にスケルトンより安く抑えられます。ただし前テナントと業態が異なる場合は、厨房設備やダクトの入れ替えが必要になり、結果的にスケルトンとの差が小さくなることもあります。
- 業態ごとの厨房比率・設備要素: ラーメン店や居酒屋、焼肉店などは厨房面積の比率が高く、ダクト・給排気設備やグリストラップ(排水中の油分を分離する設備)の新設・増強が必要になりやすいため、坪単価が上がる傾向があります。
- 坪数: 小規模な店舗ほど、設計費や給排水引き込みなど固定費的な工事項目の割合が相対的に大きくなり、坪単価が高くなる傾向があります。
- 仕上げのグレード・こだわり: 内装デザインへのこだわりが強いほど、造作家具や特殊な仕上げ材の採用で費用が上がります。
スケルトン物件の内装費用と注意点
東京23区の飲食店向けテナントは、前テナントの設備が残る「居抜き」と、構造体だけの「スケルトン」に大別されます。スケルトン物件は自由に設計できる反面、設備インフラを一から作るため費用と工期が居抜きより大きくなります。ここでは、スケルトン物件を検討する際に押さえておきたい費用項目・工事区分・工期・注意点を整理します。
スケルトン物件とは
スケルトン物件とは、床・天井・壁・柱・梁といった建物の骨組みだけが残り、内装や設備・配管配線が撤去されたコンクリート打ちっぱなしの状態の物件です。内装を一から作る必要がある一方、借り手にとってはレイアウトやデザインを自由に決められるのが最大の特徴です。これに対して居抜き物件は、前テナントの水回りや電気配線をそのまま使うためデザインの自由度は下がりますが、開店費用を抑えられ工期も短く済みます。
スケルトンで発生する主な工事と費用の目安
スケルトン物件では、居抜きなら流用できることの多い設備インフラの工事がすべて発生します。設備工事費(電気・ガス・給排水・空調・厨房)は内装費全体の30〜40%を占めることもあり、厨房まわりの給排水・ガス・ダクト工事は業態によって数百万円規模になることもあります。主な項目と目安は次の通りです。
| 工事項目 | 内容 | 費用の目安(出典により幅あり) |
|---|---|---|
| 電気工事 | 分電盤・配線。大型冷蔵庫などを使う業態では電気容量が足りず引き込み工事が必要になることも | 約20万円(15〜20坪。幹線の引き換えが必要なら50万〜100万円を追加)から約80万〜120万円まで、出典により幅 |
| 給排水工事 | 上下水の配管を厨房へ引き込む工事。飲食店ではグリストラップの設置と床の防水工事が必要になることが多い | 30万〜80万円程度から60万〜120万円程度まで、出典により幅(グリストラップ設置を含む) |
| グリストラップ本体 | 厨房排水の油や生ごみを分離する装置。設置方式で費用帯が変わる | 屋内床置き型10万〜50万円程度/屋内埋設型30万〜100万円程度/屋外埋設型50万〜200万円程度 |
| ガス工事 | 配管工事。建物にガスの引き込みがなければ前面道路から新たに引き込む | 約30万〜40万円(引き込みが必要な場合は別途) |
| 空調設備工事 | エアコン・室外機の設置。業態によってはダクト工事を含む | 15〜20坪で約80万〜120万円/空調・ダクト工事で30万〜150万円 |
| その他 | 軽鉄・ボード工事、内装・家具工事、看板(サイン)工事、厨房機器の購入。焼肉店はダクト・排煙設備、路面店はファサード(外装)が別途 | 業態・グレードにより大きく変動 |
電気工事の目安額は出典によって大きく異なります(坪数や電気容量増設の要否で条件が変わるため)。「数十万円から100万円超まで幅があり、幹線から引き直す規模になるとさらに増える」と考え、内見の段階で電気容量を確認しておくことをおすすめします。
工事区分(A工事・B工事・C工事)
テナント物件の工事は、発注者と費用負担者の組み合わせで3つに区分されるのが一般的です。
- A工事: 建物の構造(壁・柱・梁・共用部など)に関わる工事。業者の選定・発注・費用負担のすべてがオーナー側
- B工事: 専有部内にあるが建物全体に影響する設備(防災・空調・幹線など)の工事。業者はオーナーが指定し、費用はテナント負担。テナントはオーナーに費用の交渉をすることになる
- C工事: 内装の造作や什器・備品の設置。業者の選定・発注・費用負担のすべてがテナント側
線引きの例として、電気は主幹分電盤までの配線がB工事・テナント内の配線がC工事、空調は共用ダクトの分岐までがB工事・末端の個別機器の設置がC工事とする解説があります。スケルトン物件はC工事にあたる内装全体がテナント負担になる点が居抜きとの最大の違いで、さらにB工事の範囲と金額(オーナー指定業者の見積り)を契約前に確認しておかないと、想定外の負担が生じることがあります。
工期の目安
店舗設計施工.comによると、居抜き物件は設計約2〜3週間+施工約2〜3週間の合計約1〜1.5か月が目安で、表装工事が中心なら最短2週間程度で終わることもあります。スケルトン物件は10坪程度の小型カフェ・バーで約2.5〜3か月、20〜30坪の居酒屋・レストランで約3.5〜4か月が目安とされ、飲食店はオフィスや物販店に比べて「水回りと火回り」のインフラ工事に時間がかかるため、引き渡しまで3か月以上を要するのが一般的です。
契約前・着工前に確認したい注意点
- 電気・ガスの容量とダクトのルート: 重飲食は大量の電気・ガス・水を使うため、着工段階で「ビルの電気容量が足りない」「ガス配管が細く火力が確保できない」と判明すると、幹線の引き直しなど大規模な追加工事になります。電力会社・ガス会社への申請だけで2週間〜1か月近く工期が止まることもあるため、契約前に内装会社に内見へ同行してもらい、容量とダクトルートを確認しておくと安心です。
- ビル独自の制限: 「共用排気ダクトの改修不可」「床の貫通工事禁止」などビル側が独自の制限を設けていることがあります。確認せずに進めると設備を設置できず工事が中断することがあります。
- 用途変更の確認申請: 物販店から飲食店へなど前テナントと用途が変わる場合、延べ面積が200㎡を超えるケースなどでは建築確認申請が必要になることがあります。
- 建築基準法の内装制限: 飲食店は「特殊建築物」として、耐火建築物なら3階以上の部分が1,000㎡以上、準耐火建築物なら2階部分が500㎡以上、その他の構造なら200㎡以上の場合に、居室は難燃材料・通路や階段は準不燃材料での仕上げが求められます。加えて、火を使う厨房は「火気使用室」として床面積の大小にかかわらず準不燃材料の使用が求められます(主要構造部が耐火構造の場合やIHコンロのみの場合は対象外)。小規模店でも「200㎡未満だから関係ない」とは限らないため、仕上げ材の選定は設計段階で確認してください。
- 消防署への届出(東京消防庁管内): 修繕・模様替え・間仕切り変更などの工事を行う場合は着手する日の7日前までに「防火対象物工事等計画届出書」を、店舗として使用を始める場合は使用開始日の7日前までに「防火対象物使用開始届出書」を、管轄の消防署へ提出します(東京都火災予防条例第56条・第56条の2)。工事を行わずに前の設備をそのまま使う場合でも使用開始届は必要です。必要書類は防火対象物概要表・案内図・平面図・詳細図・立面図・断面図・展開図・室内仕上表および建具表などです。
- 行政の検査日程: 保健所の営業許可と消防の検査は内装工事がほぼ完了した状態で行われますが、担当者の予定が数週間先まで埋まっていることも珍しくないため、工期に余裕を持たせて早めに予約します。
退去時の原状回復(スケルトン戻し)
スケルトンで借りた店舗は、退去時に契約前の状態へ戻す「原状回復(スケルトン戻し)」が改正民法621条により義務化されており、工事費用は借主負担が一般的です。飲食店ドットコムによると、近年の相場は軽飲食(カフェなど)で坪あたり5万円程度、重飲食(焼肉など)で坪あたり10万円程度で、空中階で搬出経路が複雑・夜間しか作業できない・排水や排気の設備を大きく変更した・ダクトが伸びているといった条件では費用が上がり、小規模店舗でも100万円に達することは珍しくありません。期日までに原状回復できないと遅延料や違約金を求められることもあるため、開業時の資金計画に退去時の費用も見込んでおくと安心です。
出典: SHOPCOUNTER MAGAZINE「スケルトン物件とは?居抜き物件との比較」(https://shopcounter.jp/magazine/editors-pick/difference-between-skeleton-and-furnished)、店舗内装工事見積り比較.com「居抜き物件とスケルトン物件の違いは?」(https://tenpo-naisoh.com/tenpo/bukken/3232/)、なんでも酒やカクヤス「スケルトンからの内装工事のポイント〔飲食店開業マニュアル〕」(https://pro.nandemosake.com/mise/kouji_skeleton/)、ALL MAKE「飲食店の内装費用はいくら?」(https://allmake.co.jp/blog/restaurant-interior-cost/)、藤沢興業「グリストラップ設置費用の相場は?」(https://fujisawa-kogyo.com/grease-trap-installation-cost/)、テンポスマート「テナント物件の工事とは?A工事・B工事・C工事の区分や注意点を解説!」(https://www.temposmart.jp/articles/column/tenant_kouji/)、B工事C工事費用削減ドットコム「テナントのa工事とb工事とc工事を徹底解説」(https://bc-kouji.com/blog/20250722-42/)、店舗設計施工.com「飲食店の内装工事期間はどのくらい?」(https://www.shop-reform.com/column/opening/restaurant_construction_schedule)・「飲食店 建築基準法の内装制限とは?」(https://www.shop-reform.com/column/law/restaurant_regulations)、東京内装材料協同組合「建築基準法の内装制限一覧表」(https://www.tokyo-naisou.or.jp/siryousyuu/seigen_itiran/index.html)、IDEAL「消防法と建築基準法の内装制限とは?」(https://ideal-shop.jp/news/interiorwork/16734/)、東京消防庁「防火対象物の工事等計画の届け出をしよう」(https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/lfe/office_adv/bouka.html)・「防火対象物の使用開始の届出をしよう」(https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/lfe/office_adv/bouka02.html)・「新たにテナントを使用する皆様へ」(https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/lfe/office_adv/tenants.html)、飲食店ドットコム「飲食店の原状回復(スケルトン戻し)はどこまで必要?」(https://www.inuki-info.com/knowledge/closeContent/detail/123)
開業までの流れ
- 物件探し・契約: 立地・坪数・前テナントの業態(居抜きの場合)を確認します。
- 保健所への事前相談: 内装工事の設計に入る前に、管轄の保健所へ図面を持参して事前相談を行うのが一般的です。厨房のシンクの槽数や手洗い設備、換気設備などの基準は自治体・業態によって異なるため、着工前の確認が重要です。
- 内装設計・工事請負契約: 保健所の基準を踏まえた設計図を作成し、内装会社と契約します。
- 着工・施工: 解体(スケルトンの場合)、設備工事、内装仕上げ工事を行います。
- 消防署への届出: 工事着手の7日前までに「防火対象物工事等計画届出書」、使用開始の7日前までに「防火対象物使用開始届出書」を管轄消防署へ提出します(詳細は上のスケルトン物件の注意点を参照)。
- 保健所の完成検査・営業許可証の交付: 施工後、保健所の担当者が現地を確認し、基準を満たしていれば営業許可証が交付されます。
- 開業
出典: 神戸・春日野道の行政書士ブログ「飲食店営業許可の厨房設備基準」(https://ueda-shingo.com/archives/226)
内装が保健所の基準を満たしていないと、再検査が必要になりオープンが遅れることがあります。着工前に保健所へ相談し、設計段階で基準を反映させておくことが、スケジュール管理の面でも重要です。
内装会社選びのポイント
- 飲食店の内装工事・業態別の施工実績が豊富か
- 保健所への申請図面作成や事前相談のサポート実績があるか
- 居抜き物件の場合、既存設備の活用可否や造作譲渡の条件を見極めてくれるか
- 見積りの内訳(設計費・工事費・設備費など)が明確に提示されるか
- 保証内容・アフターフォロー体制が明記されているか
- 追加費用が発生しうる条件(解体後の下地の状態など)を事前に説明してくれるか
坪数・業態・希望する仕上げの条件をそろえたうえで複数社から見積りを取ると、費用感を比較しやすくなります。
東京で開業する場合の留意点
東京23区は地方に比べて坪あたりの賃料が高く、内装費用とのバランスを考えた資金計画が欠かせません。また、築年数の古いビルでは給排水管や電気容量、ダクトスペースに制約があり、想定より工事範囲が広がることもあります。
保健所は23区それぞれに設置されており、申請窓口や運用の細かな取り扱いが異なる場合があります。物件が決まったら早めに管轄の保健所へ相談することをおすすめします。また、都心部では防火地域・準防火地域に指定されているエリアも多く、内装材料や工事内容に制限がかかる場合があるため、内装会社や設計担当者に確認しておくと安心です。
よくある質問
Q. スケルトンと居抜き、内装費用はどれくらい違いますか? 業態を問わない目安として、ALL MAKEは居抜き坪20万〜40万円・スケルトン坪40万〜80万円、店舗内装工事見積り比較.comは居抜き坪15万〜30万円・スケルトン坪30万〜60万円(いずれも厨房機器別途)を示しています。ただし居抜きでも前テナントと業態が異なる場合は追加工事が発生し、差が縮まることがあります。
Q. スケルトン物件の工期はどれくらいかかりますか? 10坪程度の小型店で約2.5〜3か月、20〜30坪の居酒屋・レストランで約3.5〜4か月が目安です(居抜きは約1〜1.5か月)。電気・ガス容量の不足が着工後に判明すると、申請だけで2週間〜1か月工期が止まることがあります。
Q. 消防署への届出はいつまでに必要ですか? 東京消防庁管内では、内装工事の着手7日前までに「防火対象物工事等計画届出書」、使用開始の7日前までに「防火対象物使用開始届出書」を管轄消防署へ提出します。工事をせず前の設備をそのまま使う場合でも使用開始届は必要です。
Q. 坪単価の相場だけで予算を決めても大丈夫ですか? 坪単価はあくまで目安です。業態・坪数・仕上げのグレード・厨房設備の新設有無によって総額は大きく変わるため、複数社から詳細な見積りを取って比較することをおすすめします。
Q. 内装工事と保健所の営業許可、どちらが先ですか? 内装工事に着手する前に、保健所へ事前相談を行うのが一般的です。基準を満たさない内装を先に作ってしまうと、完成検査で指摘を受けて追加工事が必要になる場合があります。
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